「考えるAI」OpenAI o1登場!GPT-4との違いとその可能性を解説

OpenAIが開発した「考えるAI」o1/Strawberryとは?GPT-4との違いや、人間のように思考するChain of Thought(CoT)の仕組みをわかりやすく解説。医療、教育、法律など、様々な分野での活用事例も紹介します。

従来のGPT-4などの大規模言語モデルとは一線を画す、「Chain of Thought(CoT)」と呼ばれる革新的な技術を搭載した「考えるAI」です。

人間のように段階的に思考し、複雑な問題を解決できるo1-previewは、医療や教育、法律など様々な分野で大きな変革をもたらす可能性を秘めています。

この記事の要約
  • o1は段階的な思考で複雑な問題を解決する
  • IT、医療、教育、法律で活用が期待される
  • AIが全人類のパートナーとなる未来

1. ChatGPTのo1とは?「考えるAI」の登場

OpenAIは、元々「Q*(Qスター)」や「Strawberry」と呼ばれていた革新的なAIモデルのプレビュー版として「o1-preview」をリリースしました。

これは今までの大規模言語モデル(LLM)とは異なり、「Chain of Thought(CoT)」という推論方式を採用し、段階的な思考で問題を解決する「考えるAI」です。

GPT-4などの従来モデルは、膨大なデータからパターンを学習することで高度な言語処理を実現していました。

しかし、o1はCoTによって、人間のように推論し、より複雑な問題を解決することができます。

2. o1シリーズとGPT-4oとの違いは?

o1の最大の特徴は、「Chain of Thought(CoT)」と呼ばれる、人間に近い段階的な思考プロセスを模倣する技術です。

例えば、「東京から大阪まで新幹線で行くには何時間かかりますか?」という質問に対して、これまでのGPT-4などはすぐに答えを提示します。

東京から大阪まで新幹線で行くには何時間かかりますか?
約2時間30分です。

一方、o1は段階的に思考を進め、まず「東京駅から新大阪駅までの距離を調べ」、次に「新幹線の平均速度を考慮して計算する」といった段階を経て、最終的な答えを導き出します。

東京から大阪まで新幹線で行くには何時間かかりますか?
まず、東京駅から新大阪駅までの距離は約515kmです。次に、新幹線の平均速度を時速約240kmと仮定すると、単純に距離を速度で割り算して計算すると、約2時間30分かかることがわかります。

この思考過程は人間にとって理解しやすく、AIの判断根拠を把握する上で大きなメリットとなります。

さらに、o1は対数線形計算スケーリングという技術を活用しており、与えられる計算能力を増やすことで、その推論の質は効率的に向上します。

しかし、この技術は計算の質を向上させるものであり、単純に応答速度を早めるわけではありません。

3. ChatGPT新モデル「o1」のテスト評価

引用元:o1はGPT-4oに比べて推論能力が大幅up – OpenAI

o1の能力は、様々なベンチマークテストで実証されています。

例えば、アメリカの数学オリンピックの予選では、GPT-4が平均12%の問題しか解けなかったのに対し、o1は平均74%の正答率を達成しました。

さらに、64個の回答から多数決で比較・統合することによって正答率は83%まで上昇しました。

UCLAの著名な数学者であるTerence Tao教授は、o1を「平凡だが完全に無能ではない大学院生」に例え、以前のモデルと比較して大きな進歩を遂げていると評価しています。

4. ChatGPT o1シリーズの弱点は?

複雑な問題解決能力を持つo1ですが、いくつかの弱点も存在します。

まず、長い質問への対応や、テキストの執筆・編集においては、GPT-4と同等、もしくは劣るケースが報告されています。特に、長いプロンプトやタスクの分解において苦労する場合があるようです。

また、中学生レベルの簡単なパズルを解けないケースもあり、特定の推論タスクにおいてはまだ発展途上と言えます。

さらに、o1は、GPT4oよりかなり低速です。複雑な問題を段階的に解決する過程で計算時間が増え、応答速度が遅くなります。

加えて、計算量が膨大になるため、今後採算が取れるようになるのか、という問題を抱えています。

利用者から見てもコスト面に課題があります。例えば、OpenAIのAPIを通じてo1-previewを利用する場合、GPT-4oの6倍以上の料金がかかります。

また、ChatGPT Plusユーザー(月額30ドルの有料サブスク会員)でも、週あたり50メッセージの制限があります。

5. ChatGPT「o1-preview」の使い方

前提条件としてo1-previewとo1-miniを利用するには、月額有料会員である必要があります

ChatGPTの画面左上に、現在使用しているモデル名が表示されています。そこをクリックすると、モデル一覧が表示され、その中に「o1-preview」と「o1-mini」が選択肢として表示されます。

利用したいモデルをクリックし、チャット欄に質問やプロンプトを入力することで、o1シリーズの高度な推論機能を体験することができます。

OpenAI o1でAPIを使う条件と制限

o1-previewとo1-miniのAPIを利用するには、API使用レベル5が必要です。これは過去OpenAIに、合計1,000ドル以上の支払いをしたことのあるVIPユーザーが該当します。

  • o1-preview: 1分間に最大100リクエスト
  • o1-mini: 1分間に最大250リクエスト

このモデルはプレビュー段階にあり、今後制限が変更される可能性があります。

6. ChatGPT o1「考えるAI」の活用事例

o1は、その高度な推論能力を活かして、様々な分野での応用が期待されています。具体的な活用事例をいくつかご紹介します。

  • 保険: 複雑な書類や健康規則を処理し、医療サービスのコストを正確に算出したり、不正や無駄な医療費請求を特定したりすることが可能です。例えば、新生児の出産費用を保険規約や医療費のデータに基づいて迅速かつ正確に算出することができます。大量の医療費請求データの中から、不正請求や無駄な支出を効率的に検出する力も持っています。
  • 医療: 患者の診断を支援し、医療記録を分析することで医師の判断を助けることができます。例えば、細胞の配列データに注釈を付けたり、過去の医療記録をもとに診断を行うことで、医療研究の加速や治療の精度向上に貢献します。
  • 法務: 法律文書の作成や判例調査を迅速かつ効率的に行えます。たとえば、IPO(株式公開)に必要な書類の作成を支援し、企業の構造や財務状況に関する質問に基づいて、適切な文書を作成することが可能です。法律専門家は、AIとの対話を通じて複雑な法律文書を素早く作成できます。
  • プログラミング: 複雑なプログラミングタスクを解決するための提案や、バグ修正を効率的に行います。コードの問題をステップごとに分解し、改善策を提示することで、デバッグやソフトウェア開発のスピードと精度が向上します。
  • 教育: 生徒ごとの学習データに基づいて、最適な学習プランや教材を提供します。過去の学習履歴を分析し、それぞれの生徒に合った問題やコンテンツを提示することで、効果的な学習をサポートします。学習の理解度に応じて、リアルタイムで学習内容を調整することも可能です。

今までのAIでは難しかった、より複雑で人間的な思考を必要とするタスクをこなせるようになったことがわかります。

今後o1は、単なるツールではなく、「考えるAIパートナー」として、様々な分野で活躍していくかもしれませんね。

7. OpenAIの新モデル「Orion」とは

OpenAIは、o1/Strawberryの開発をさらに進め、より強力な次世代モデル「Orion」の開発を目指しています。

OrionはAIの幻覚であるハルシネーション(誤回答)を減らすことが目標の一つです。特に医療や金融といった正確さが求められる分野での活用が期待されています。

さらに、Orionはマルチモーダル入力(テキスト、画像、動画など)に対応しており、これまで以上に多様なデータ形式を処理する能力を持っています。

この機能により、複雑なタスクや異なるデータソースの統合が可能となり、AIがより広範な分野で活躍することが期待されています。

Orionの登場により、AIは単なるデータ処理ツールから、問題解決のパートナーへと進化するかもしれませんね。

ただし、Orionを含むOシリーズのモデルは、大量の計算処理を必要とするため、高性能なコンピュータや専用のインフラが必要です。

また、モデルをより大規模に運用しようとすると、計算負荷が増えるため、効率的なスケーリング(システムを大きくして処理能力を上げること)が難しい課題となります。

8. まとめ:o1はAIの未来をどう変える?

o1は、「Chain of Thought(CoT)」という革新的な機能を搭載し、AIの推論能力を大きく進化させました。AIがまるで人間のように考え、複雑な問題を解決する、そんな未来が現実になりつつあります。

o1やその後継モデルのOrionは、医療、教育、金融、科学など、様々な分野で活躍が期待されています。

AIが医師の診断を支援し、新薬の開発を加速させ、一人ひとりに最適な学習を提供する未来も、そう遠くないかもしれません。

o1は、AIが単なるデータ処理ソフトから、課題を一緒に解決するパートナーへと進化する、重要な一歩となりそうです。

参考文献:LLMによる推論能力の学習 – OpenAI

参考文献:OpenAI の推論モデルが特別な理由 – The Infomation

コメントする

ABOUTこの記事をかいた人

Web、Python、生成AI、投資、行動経済学の知見を活かし、みんなの生活を豊かにするための情報発信を心がけています。日々の選択を少し変えるだけで、ちょっと笑顔が増えるかも。一緒に学び、成長しながら、より良い人生にしていきましょう。